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ベストのススメ(第三回)

こんにちは。

本日もベストの歴史のお話です。
相変わらずマニアックな話でございます。

(前回分はこちら)↓

第一回
第二回

これまではベスト、という名前の服の誕生についてお話しました。
それでは、出来た当時コートほど長さがあったベストは
どのようにして今のサイズになっていたのでしょうか。

 

第二回でお話したチャールズ2世の時代から
もう少し後、18世紀のお話です。
ベストのお話の前に、また今回も
人物のご紹介から致します。
その人物とはチェスターフィーフィールド4世伯です。
(チェスターフィールドコートを初めて着たとされる、
チェスターフィーフィールド6世の祖父にあたる人物です。)

彼は、「立ち振る舞い」「人望の集め方」
「人に好かれるマナー」など、俗世間で名を上げる為の方法論を
これでもか、というくらい書き残し世に広めた人物です。
「一般論を語る人間を信用するな」
「人をほめる時は陰でほめろ、ただし相手に伝わるように」
など現代にも通用するような老獪な処世術をいくつも
子孫に伝えており、のちに編纂された書簡集は
今日でもジェントルマンとして
認められるためのマニュアルとして読み継がれています。

その中には「人に好意を持たれるための服装術」
というようなことについても書かれております。
簡単にいえば、単に個の主張や階級の象徴だけでなく、
人望を集められる服を着なさいと彼は説いたのです。
お金さえあれば実現できたそれまでのお洒落とは
随分変わってきましたね。

彼のお話は深入りすると大変話が長くなってしまうので、
ここではこういう人物がいたことと、
彼の活動により「ただ派手な格好をするのは無粋であり、
『個人としても社会人としても多くの人々が
望ましいと思うような麗質を備えた理想的なイギリス人、
すなわちジェントルマン』だと思われるような
服装をすべきなのだ」というような理念上の土台ができ、
それが広まっていたのだという事だけ覚えておいてください。

 

こうしたチェスターフィールド流服装術が広まることによって
スーツはこのまま優雅に、品よく洗練されていくのかともおもいきや、
18世紀後半ある種のカウンターカルチャーに
大きく影響を受けることになります。
その名も「マカロニ」。

イタリア帰りで衣服に新しいテイストを持ち込もうとした
「マカロニクラブ」という青年グループの名前に
由来する彼らの服装は、当時のファッションを過度に歪め、
誇張し、それまでのスーツスタイルを茶化すことを
はっきりと意図していました。
おまけに異常に派手なカツラと、過剰なほど
女性的なふるまいも彼らの特徴でした。

macaroni2

上の絵をご覧ください。向かって右のマカロニファッションの
若者をみて、左の保守派とみられる人物が、驚愕しています。
いつの時代も若者たちは大人達のルールを
壊したくてしょうがないものなのかも知れません。

人々を困惑させたこのファッションは、
そう長くは続きませんでした。
やりすぎは滑稽、これ見よがしの誇示は
下品であるということを人々に再認識させ、
本流となっていたチェスターフィールド流上品さを
後押しすることとなったようです。

しかし同時に、不思議なことに皆が毛嫌いしたはずの
マカロニファッションが、本流のスタイルに
大きな影響を与えるようになります。

例えば、マカロニファッションでは上着のシルエットを
崩さないように外のフラップ付きポケットをなくし
内ポケットを付けましたが、
これは今日の内ポケットの起源になっています。

また、マカロニ以外の人々も、1777年頃は
ジャケットも折り返しの衿を着るようになり、
飾り釦も付くようになりました。
そして、この時ついに一般人がきるベストの着丈も
今と同じくらいグッと短くなったのです。

(やっとベストの話がでてきましたね)

「短いベストで股間のラインを見せるなんて」…と
マカロニファッションはのベスト丈は
大いに顰蹙を買っておりました。
短いベスト丈は当時多くの人が顔をしかめるような、
極めてきわどいデティールの服だったのです。
にもかかわらず、紳士服の世界はちゃっかり
このスタイルを取り込んでしまったのです。

なぜそんなことになったのか、という明確な答えはわかりません。
(書籍にあまり残っていないだけで実は当時はそれなりに
受け入れられたファッションだったのかもしれませんね。)
兎にも角にもこうした紆余曲折を経て、
ようやくベストは今のサイズに落ち着いたわけです。

以上、今回も長くなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。

今日のベストは、マカロニファッションの反体制的なメッセージと、
伝統に固執せず亜流を上手く呑み込んだ
スーツスタイルの寛容さの結晶ともいえる
デザインなのだと思えば、またさらにベストの見方が
変わってくるような気がしませんか。
そしてこのときエレガンスの中にわずかに毒を取り込んだことが、
今日のスーツスタイルの多様性の根幹を
築いたと言えるかと思います。

次回は最終回となります。
今しばらく、お付き合い頂ければ幸いです。

大阪本店 中村

 

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