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ベストのススメ(最終回)

こんにちは。
ベストの歴史のお話も本日で最後です。
前回分はこちら↓

第一回
第二回
第三回

 
本日はベストの“アンボタンマナー”のお話でございます。
男性シングルスーツの釦は一番下のボタンは留めない。
これはスーツの着方の基本の一つです。
このことを舶来の言葉にするとそのまま
アンボタン(釦を留めない)マナーとなるわけでございます。
ちなみにジャケットのアンボタンマナーの話をすると合わせてよく出てくるのが
アメリカの第35代大統領ジョン・F・ケネディ(1917~1963年)です。

 

彼は二つ釦のスーツでも第一、第二釦どちらも留めていたことで有名です。
お坊ちゃん育ちすぎて服のマナーを知らなかったなんて言われたりもしますが、
本当はきちんと二つ釦を留めるスーツをオーダーメイドで作っていました。
選挙の際、あえてのルール破りでインパクトを狙ったとか、
TV映りを考えたときにウエストを少しでもしまって
見せようとしたなどと言われております。

 

結果的に選挙に勝利したわけですからこの作戦も多少は意味が
あったのかもしれませんが、基本的にNYなど一部の都市を
のぞいてあまりお洒落に敏感ではないアメリカだから通用した作戦です。
彼が有名人で、どちらも留めていておかしくない様に
仕立てていて、スタイルを確立していたから成り立ったのであって、
簡単に真似をしても違和感が出ます。
(ケネディ大統領へのリスペクトを表現しているとは
まず受け取ってもらえません)
ケネディ大統領の例はあくまでルール破りなので、
一番下は留めないのが正解、と思っていたほうが良いかと思います。
脱線しましたがここからがベストのお話です。

 

諸説ございますが、一般的にベストの一番下の釦は基本的に外しましょう、
という習慣は19世紀の初めから、
広めたのは今なお紳士服の世界に名を轟かせ続ける
ボウ・ブランメルでございます。

ボウ(洒落者)・ブランメル。
本名ジョージ・ブライアン・ブランメル。
彼についてはまたいつか、しっかりとブログで
ご紹介したいと思っておりますが、
とにかく「むちゃくちゃお洒落である」ということで
成り上がった人物なのでございます。
それもやたら派手な格好をするわけでなく、
至ってシンプルな引き算のお洒落でした。

社会的身分はエスクワイア(上流階級ではあるがナイトりもよ下)と、
貴族から見ればほぼ平民のような立場でありながら、
その大胆な態度と落ち着き払った優雅さが
時の摂政殿下ジョージ4世の目に留まり、
自分の近衛連隊に引き入れられたのが伝説の始まり。
並みいる名門貴族を差し置いてドンドン出世しながら
社交界でもとても有名になりました。
ブランメル欠席の催事は失敗とみなされ、
「王様御用達」よりも「ブランメル様御用達」の方が
はるかに価値があると言われ、
当時の有名な上流階級のバイロン卿に
「ナポレオンになるよりブランメルになりたい」
とまで言わせてしまうスーパースターだったのです。

buranmel1

そんな彼がある日ジョージ4世のパーティに参加した日の事です。
ジョージ4世は、うかつにもボタンを掛け忘れてパーティーに出席しました。
飽食で腹がでっぷり膨れた殿下のことだけに、
まるではちきれてボタンがはずれたようでとても目立ちます。
そこでブランメルが殿下に恥をかかさないために、
自分のベストのボタンをさり気なく外しました。
パーティーに出席した人はあのブランメルと摂政殿下が、
揃ってベストのボタンを外していたので、
最新の着装マナーと勘違いして、一気にこの着方が広まりました。

この話が、ベストのアンボタンマナーのルーツとしては
おそらくもっとも有名なエピソードです。
なかなか心温まる話でございます。
正式な格好をしたい、という方はベストのアンボタンマナーも
意識なさってみて下さい。

 

…ただし、少しだけご注意頂きたいことがございます。
ブランメルの素敵な話の直後、
いきなり自ら否定するようですが、
いかなるベストも一番下の釦ははずすべきというのは
少し強すぎ表現かと思います。
ベストのアンボタンマナーはジャケット程絶対的なルールではございません。
実際五つ釦で全て留めるデザインのベストなんかいくらでもあるのです。

VEST4

上の画像の様に剣まで釦がきている場合は留めない。

VEST5
二枚目の画像のように、一番下の釦が剣の上なら
留めても可(外すべき釦をもともと付けていない造形)です。
この画像くらいの位置にある釦なら「留めるべき」と言っていいと思います。

 

ジャケットの場合、今日一番下をなぜ留めないかという
最大の理由は「留める前提の造形になっていないから」であり、
不自然なシワができて変だからです。
仮に歴史的な由来を全く気にしないとしても、
シルエットや着心地がまずくなります。
逆に全て留める造形になっているケネディ大統領のスーツに関しては
間違いとはいえないのです。
同じ理屈でベストの一番下の釦を留めるのであれば全くおかしくありません。

 

ナポリのテーラーに直接ベストの釦について
聞いてみてたこともありましたが、
「私は六つ釦五つ掛けのデザインにするけど
好きにしたらいいんじゃない?」
というような回答でした。
またある時日本のベテランのお師匠に聞いたときは
「いくつ釦のチョッキでも絶対に一番下のボタンは外しなさい。
そういうもんだから」と言われました。
「五つボタン五つ掛けこそもっともクラシックだ、
だから結婚式のベストはだいたいこのデザインなんだ」
というお師匠もいます。

各々が自分の信じたスタイルを提案するテーラーに対して
正しさを論じることにあまり意味があるとは思いません。
こういう話も踏まえ今回ご紹介したブランメルのエピソードは、
あくまで「こういうルーツもあるよね」、
というくらいで受けとめて頂けるとありがたいです。
知らずにできていなかったり間違えているのはよくありませんが、
知ったうえでどこまで歴史に準ずるか、
どう表現するかはある程度個人の価値観と言えると思います。
ベストの釦の留め方はなかなかこの辺りがグレーなので、
「一番下まで留めるのが常識」と思っている人も、
「一番下を留めるなんて非常識」と思っている人もいます。
相手の見識をしっかり慮って、野暮な指摘をしないようお気をつけください。

 

 

さてさて、少し歯切れは悪くなってしまいましたが、
2月は「ベストの名前」「ベストの背中」「ベストの着丈」
「ベストの釦」とベストにまつわるお話をたっぷりご紹介いたしました。
今後とも少しマニアックで楽しいスーツのお話をご紹介致します
来月もお楽しみに。

 

大阪本店 中村

 

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